小島―
アールワイズカフェバーの担当の小島です。
本日は、武蔵野美術大学通信課程の「滝野智菜(たきの ともな)」さんに独占インタビューを行わせていただきます。
滝野さん、本日はよろしくお願いします。
滝野―
よろしくお願いします。
イラスト要素を取り入れた油彩画
小島―
最初に簡単な自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。
滝野―
はい、現在武蔵野美術大学通信課程2年の滝野智菜です。
油絵を専攻していて、最近は印象派のような作風で制作を行っています。
小島―
滝野さんは小さい頃から絵を描かれていたのですか?
滝野―
はい、小さい頃から絵を描くことが好きで、高校になってから、もう少し絵が上手くなりたいと思い、高校生のころにデッサンを始めました。
そこから油絵をはじめ、現在に至ります。
小島―
高校生の頃にデッサンや油絵をはじめたのですね。
高校は美術学科のような専門的な高校だったのですか?
滝野―
いいえ、一般の高校で美術部に入っていました。
ただ、2年生くらいの頃に辞めて札幌武蔵野美術学院に通い始めました。
小島―
なるほど、もともと絵が好きだったのですね。
ちなみに影響を受けた作家さんや作品などありますか?
滝野―
それがあまりいないんです。
好きな作家は色々いるのですが、好きと描きたいは全然違うんです。
ただ、その中でいうとフェルメールなどが好きで、以前に古典技法などを習った時に参考にしていました。
しかし、実際に自分が描くとなると違うなと思う事が多かったんですね。
そのため、技術に関しては好きな作家がいるわけではなく、その時に描きたいものに応じて参考にする人も変わってきます。
また画家ではありませんが、イラストなどは影響を受けた方が結構います。
小島―
イラストも描かれるのですか?
滝野―
はい、今は油絵で少しイラストっぽい作品も描こうかなと思っています。
小島―
それは今回展示されている「アウトライン」のような作品ですか?
滝野―
はい。
イラストの表現を油絵に持ち込みたいなと思って挑戦しています。
例えば、漫画などで動きを表す「効果線」の様に動きの方向に線を引いたり、「集中線」など、そういったものを油絵にも取り入れていきたいと思っています。
今制作中の大作でもそれを試験的にやってみようかと思っています。
小島―
漫画のような線的な要素も入れていくってことですかね?
滝野―
そうですね、今まで写実的なことをやっていたのですが、もっと自分が楽しめるような絵を描いていきたいと始めています。
小島―
それでは、いま新しい事に挑戦し始めたところってことですね。
ちなみにそのきっかけは何かあったのですか?
滝野―
去年の1月に道展u21に出した作品で、これは古典技法を用いて描いた作品で街並みやモチーフを細密に描くという事に挑戦しましたが、制作途中で終わりが見えなく、描いていて楽しくない。といった気持ちに陥り、制作途中で心が折れてしまいました。
それまで何があってもなかった無くならなかった食欲も急になくなってしまい、精神的にも辛い時期でした。
最後は作品を完成をさせましたが、そういう事もあり完成まで半年近くかかってしまいました。
それで、今までやっていた古典技法など、実は私には向いていないのではないかと気づいたんです。
そんな時に学院で古典技法の講座があったのですが、それが今までと違うタイプの古典技法で、それをやる時に少しふざけた題材で行いました。
それがココアシュガレットを煙草のように吸っているという絵になります。
この作品も少しずつ制作していたため、半年くらいかかってしまった作品になりますが、描いていて楽しいと感じることのできた作品になります。
また、こういった面白い作品であれば、大作でも描けるのではないかと思い作品を制作しています。
小島―
なるほど、結構つらい時期があったのですね。
滝野―
写実だとモチーフ宇を細密に描かないと終わりがないというプレッシャーもあって、心が折れてしまいそうになるんですが、今のような描き方は楽しみながら制作ができています。
凝り性な性格もあって、しっかりやらないと終われないというのが逆にプレッシャーになってしまったのかもしれません。
絵を描くことは義務ではないので、自分が楽しく描けることが大切だと感じました。
小島―
作家さんって自分との闘いみたいなところもイメージとしてあるので、やはり大変ですね。
今後はどういった制作テーマで描いていこうか決まった感じですか?
滝野―
いえ、まだです。
これで決まりって言うわけではないんです。
いろんなことに挑戦していって、そこから自分の個性などを探し出していけたらと思います。
もともと美術の基本を学ぶための過程でデッサンを始めて、油絵をやってという流れできてしまっているのですが、作品で何をやりたいかというよりは、作品って勉強の過程で生まれるものと考えています。
例えば人体の手が上手く描けないなら手をひたすら描く、脚が描けない時は脚だけ描くなど、そういった勉強の過程でということですね。
もともとはイラストが描きたく、本を買ったりして独学で描いていました。
ただ、何事にも基礎があると思っていますが、技法書などには応用的なことは載っていますが基礎が抜けていることがあるんですよ。
イラストって三次元にあるものを二次元に置き換えるみたいな応用的なものだと思っているので、三次元のものをしっかりと描けるようにならにとダメなんじゃないかなと思っています。
でも美術の基礎って昔はよくわかっていなかったんです。
そんな時に美大受験の漫画で、ブルーピリオドという漫画を読んだ時に、「デッサンは全ての美術の基礎だ」って書いてあったので、それならデッサンをやってみようと思ってデッサンを始めました。
足し算ができないと引き算もできないように、絵ってもともとモチーフがあるものから取捨選択して描いていくわけじゃないですか。
モチーフを細密に正確に描けないと抽象的には描けないと思い、そのため基礎を重要視しています。
小島―
なるほど、基礎って大事と言いますからね。
最終的にはイラストを描いていきたいのですか?
滝野―
どちらかというと目的の為の手段のようなものだったんです。
もともと研究者気質な部分もあり、それが自分の中で大きくなっていって、絵のことをもっと勉強したいと変化して、今は絵のジャンルなど問わず、色々な事をやってみたいと思っています。
油彩画をはじめたきっかけ
小島―
油絵はじめようと思ったきっかけはなんでしたか?
滝野―
他の画材がものすごく苦手だったからです。
特に水彩とポスターカラーは苦手でした。
油絵を始めたのは高校1年生の時に美術部の先生に「油絵をやってみないか」とお声がけ頂いたのがきっかけです。
それから高校2年生くらいまでは、とびとびで制作していたのですが、高校3年生から本格的に油絵を専攻し始めました。
小島―
最初の油絵ではどんなものを描いたんですか?
滝野―
最初はイラスト調のものを絵で描くというものでした。
リアルな人物画のようなものではなく、下書きでイラスト調のものを描いて、それに油絵の具で彩色するといった感じでしたね。
色彩や造形への魅力
小島―
描くだけでなく他の作家さんの作品を観たりなども日頃行うのですか?
滝野―
他の方の作品を見るのも大事だと先生からも言われていて、ピンタレストなどで色々見たり、自分が好きな作品を参考にしたりしています。
よく海外の方の作品などを参考にしたりします。
あとはイラストを見て勉強することもありますね。
好きな漫画の影響を受けたりもします。
小島―
例えばどんな漫画作品になりますか?
滝野―
影響を受けている漫画といえば、炎炎ノ消防隊やソウルイーターなどを描かれている「大久保篤」先生やブルーロックという漫画の作画担当の「ノ村優介」先生などです。
色彩や造形がとてもすごく、好きなんです。
割と形式的に描いている感じがあるのですが、自分の中でいろいろ勉強してその型に落ち着いている感じでとても良いなと感じます。
作品制作で楽しいと思う瞬間
小島―
辛い時期のエピソードもありましたが、作品を制作していて楽しいと思う瞬間はどんな時ですか?
滝野―
作品を発表して見に来てくれた方が私の絵を見てくれている時が嬉しいです。
あとは、描いている時でも仕上げの段階が一番楽しいですね。
小島―
滝野さんは、人物を描くのが好きなのですか?
滝野―
そうですね、昔から描いていたりするので、人物を描くのは上手くなりたいと思います。
ココアシュガレットありますか?
小島―
続いて、これまでに制作してきた中で思い出の作品についてご紹介いただけますか。
滝野―
はい、先ほどのココアシュガレットを吸っている作品が、やはり絵を楽しんで描く大切さに出会えた作品です。
これまで学院では古典技法をやられる方が多いので、お堅いテーマじゃないといけないのかなと思っていたのですが、この絵を描いてからはあまり思わなくなりました。
小島―
素敵な作品ですね。自画像ですか?
滝野―
はい、そうです。
作品の参考写真を撮影する際、喫煙者の先生に「煙草を吸う時の手の動きはこうだよ」と教えていただいたり、指が伸びすぎているなど、いろいろと教えてもらいました(笑)
あと、ココアシュガレットが全然どこにも売っていなくて、スーパーを2、3件周ったりしていました。
それでココアシュガレットを買った日の事なんですが、すごい大雨でお店に電話をして「ココアシュガレットありますか?」って問い合わせをして買いに行ったんです。
今後の人生で「ココアシュガレットありますか?」なんて二度と言わないだろうなって(笑)
作品だけでなく、そういったエピソードもあり思い出となっています。
小島―
「ココアシュガレットありますか?」は、お店の人もびっくりですね(笑)
滝野―
こういったお菓子で遊んでいる絵などもいっぱい描いていきたいですね。
また、これを描いている時にちょうど大学の授業で、ダ・ヴィンチの遠近法というのを学び、最後の仕上げにそれを応用したんです。
小島―
ダ・ヴィンチの遠近法とは?
滝野―
前面にあるものは暖色を、後方のものには寒色を重ね、その色彩の寒暖差の対比によって遠近感を出すというもので、このシャツなどは黄色を重ねて、後ろの背景は青系の色を重ねています。
こういった自分が学んだ事を使いつつ、楽しく描けた良い絵だったなと思います。
学院での活動と生活について
小島―
札幌武蔵野美術学院での生活や環境についてお話を伺わせてください。
教えてくれる先生方はどんな感じですか?
滝野―
現役の画家をやられている先生がたくさんいらっしゃり、私がいろんな事を聞いてもすごく親切に教えてくれます。
3年次編入という制度があって、編入を考える生徒が多いです。
それで、美大をもう一度チャレンジしようという人が結構いますが、私は先生方がとても熱心に教えてくれるので、編入せずこのまま学んでいきたいと思っています。
小島―
油絵の講師の方は何名くらいいらっしゃるのですか?
滝野―
たぶん、4名になると思います。
小島―
結構いるんですね。
続いて一緒に勉強する仲間についてもお伺いしてよろしいですか。
滝野―
今まで美術部にいたころは周りにイラストなどを中心に描かれる人が多かったので、その中で1人でデッサンなど行っていると意識の高い人と思われたりと周りとの壁みたいなものを感じてしまうことがありました。
学院に入ってからは道内の美大だけではなく、道外の美大などを目指す人や3年次編入のために頑張っている人達がいて良い環境だなと思っています。
小島―
仲間や先生、みんな仲が良いのですね。
滝野―
そうですね、仲間とは絵の話だけでなく、どうでもいい話などもして、和気あいあいとした雰囲気です。
今後の目標について
小島―
今後の活動や制作目標などございましたら教えてください。
滝野―
油絵でしたら今の絵柄でココアシュガレットみたいな、ちょっと変わったテーマの絵を描いてみたいです。
大作の制作は楽しいですが終わりが見えず、疲れてしまう事もあるため、小品も作っていきたいなと思っています。
小島―
なるほど、イラストは家で描いていたりするんですか?
滝野―
はい、今後は漫画も描いてみたいなと思っています。
カラーの物を白黒で表現したり三次元の物を二次元にするときにどこを省略すればいいのかなど、すごく難しそうだなと思うのですが、ストーリーを作ったりもできるので、挑戦してみたいと思います。
小島―
いろいろできるのですね。
今度は絵画以外の作品も是非見てみたいですね。
それでは、これで滝野智菜さんのインタビューを終わらせていただきます。
滝野さん、本日はありがとうございました。