みなさんは現代アートについてどんな印象を持っていますか?
「興味はあるけど難しそう」
「わからない」
「どう楽しめばいいのかわからない」
といった、少しとっかかりにくいイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
確かに、現代アートは歴史や背景を知らなければ「理解できない」と感じやすく、魅力を知ることができないまま通り過ぎてしまう方も多いでしょう。
しかし、現代アートの楽しみ方や背景を知り、現代アートの魅力に気づくと、新しい視点や新しい自分に出会うことができます。
本記事では
- 現代アートとは何か
- 現代アートの楽しみ方
- 魅力的な現代アーティスト
を紹介しています。
これを読めばあなたもきっと現代アートを好きになれるでしょう。
ぜひ最後まで読んで行ってくださいね。
現代アートとは
現代アートとは、現代における社会問題や社会情勢を反映し、社会への問題提起や批判を感じる作品です。英語では「contemporary art」というように訳されます。
現代アートを年代で大まかに表すと、第二次世界大戦後の1950年以降から21世紀に作られた作品です。
これまでの伝統的な芸術作品は、リアリティや技術を重要視してきましたが、現代に向かうにつれて、思想やコンセプトといった目に見えないものをテーマに制作するようになりました。
現代アートは「美」にとらわれることのない、前衛的な新しい表現だといわれています。
といっても言葉で理解していただくのは少し難しいかと思います。
実際の作品とともに、少しずつ現代アートについて説明していくのでぜひ最後まで目を通してみてくださいね。
現代アートは難しい?
現代アートはよく難しいといわれています。
それもそのはずで、そもそも現代アートというのは思想やコンセプトといった、「みえないもの」をテーマとしています。
人物画や風景画などとは違い、みえないものを表現するのですから難しいと思われるのも当然かと思います。
また、そんな中19世紀後半に人々を驚愕させるものが発明されました。
それは「写真」です。
写真の登場以前は、リアルに描く技術が重宝されてきましたが、写真が登場したことによってリアルに描く技術の価値が暴落したのです。
その写真の発明によって今までの常識は覆され、画家たちは自分たちにしかできない表現を追い求めるようになりました。
自分たちにしかできない表現とは、すなわち今までになかった表現、新しい表現です。
そういったことから現代アートは、今までの常識を覆してしまうような新しい表現という位置づけとなったため、現代アートをすぐに理解するのは難しいというのも理解できるかと思います。
しかし理解できないからこそ、面白いと感じられる部分もあるのです。
現代アートの面白さ
それでは現代アートの面白さとはいったいどこにあるのでしょうか。
それぞれ3つからなるアートの面白さをご紹介します。
現代アートは知的ゲーム
現代アートの父と呼ばれているマルセル・デュシャンは、「作品を起点として鑑賞者が思考をめぐらし、そして鑑賞者の中で完成される」という言葉を残しています。
つまり、作品は私たちに思考することを促し、私たちが何らかの思考することで作品は完成されるということです。
現代アートを鑑賞するということは頭を使うことになります。目だけでなく、頭でも楽しむ、それが現代アートです。
現代アートの作品たちが、どのように完成するかは私たちの思考にかかっているというのは面白く感じますし、別の視点で捉えると、その作品の答えは「人によって異なる」ということにもなります。
この考え方に関しては後ほど詳しく説明します。
鑑賞者が参加できる
先ほど述べたように、現代アートは鑑賞者が思考してこそ完成します。そのため、現代アートは鑑賞者が参加できるものも多いのです。
例えば、2003年に六本木で行われたリー・ミンウェイ個展「The Tourist」。
この個展では、あるルールが設けられました。
それは、参加者がある一定の日に参加者自身が暮らす街を特徴づける場所や空間、体験などをリー・ミンウェイに紹介し、街について自身が持っている知識を「贈り物」としてリー・ミンウェイに披露すること。
この作品によって、参加者は信頼や親密さ、自己認知についての問題を深掘る場を得たのでした。
リー・ミンウェイは芸術と人生を曖昧にぼかすことや人間関係の探求をするアーティストです。
リー・ミンウェイは作家自ら参加者と関わりあうことで、参加者に問いかけ、考えを深めることを促しています。
そんな彼は、参加者について、「私とともに作品を作るクリエイターであり、作品の真なる所有者である」と述べています。
リー・ミンウェイが参加者に対して問いを投げかける作品がもう一つあります。
それが「ひろがる花園」という作品。
この作品では来場者が会場に展示されているガーベラを持ち帰ることができます。
しかし、その花を家に帰る途中で見知らぬ誰かに渡さないといけないのです。
そして「そこで起こる何か」まで含めてアートになります。
アートに参加し、あなた自身も作家になることで、新しい視点を得られるのではないでしょうか。
また、今を生きる作家と共に作品を作れるというのは少しワクワクするものがあるかと思います。
私たちと同じ時代に生まれている
現代アートは、今なお新しいものがどんどん生まれ続けています。そしてそれを生み出しているのは私たちと同じ時代を生きるアーティスト達です。
今まさに起こっている出来事について問いかけたり、意見したりするような作品も多いので、私たちが新たな視点を持つきっかけにもなります。
現代アートの楽しみ方
現代アートの楽しみ方に特にルールなどはありませんが、いきなり楽しむのは少し難しく感じてしまいますよね。
そんな方々のために、現代アートのお勧めの楽しみ方をご紹介します。
どれか一つでも取り組みそうなものが見つかったら是非試してみてくださいね。
作品の中に入ってみる
先ほどもご紹介しましたが、現代アートは鑑賞者が思考することで成り立つアートです。
そのため、作品へ直接鑑賞者が参加できるタイプのアートも増えてきています。
例えば、光と知覚の関係を表現するアーティストのジェームズ・タレルの作品、「Blue Planet Sky」は空間を丸ごと展示しています。
部屋はコンクリートで作られ、壁に沿うようにベンチが設置されています。
そして、その部屋の天井は正方形の形に切り取られており、部屋に入り、上を見上げると正方形に切り取られた空が目に入ります。(以下画像)
この部屋に入ると、絶えず移り変わる空と光を感じられます。
鑑賞者に光の存在を改めて認識させる作品なのです。
実際に体の五感を使って作品に触れることで、感じ取れるものが増えます。
ジェームズ・タレルの部屋のような、実際に触れることのできる作品がある場合は、ぜひ触れてみましょう。
ちなみに、「Blue Planet Sky」は金沢21世紀美術館で鑑賞できるので、興味を持った方はぜひ訪れてみてくださいね。
感じたことを話し合う
感じたことを話し合うのも、現代アートを鑑賞する醍醐味です。ほんの些細なことでもいいので、感じたことを友達や他の鑑賞者と話し合ってみましょう。
人の意見を聞くことで、思わぬ発見があったりします。
自分の感じたことを人に伝えようとすることで、頭の中は言語化され、現代アートに対する考えが深まっていきます。
アーティストや作品の背景について知る
現代アートは「目に見えないもの」をテーマとし、制作されているということは先ほども話しました。
そのため、知識や背景を知らなければ、意味の分からないものも存在します。
鑑賞前に知識をつけてから触れ合うのも視点が増えて楽しいですし、観賞後に調べると、新たな発見や見え方の変化があって面白いでしょう。
宗教や政治、時代背景などを調べると理解が深まる場合が多いです。
難しいものはとばす
作品にも相性がありますし、わからないものがあるのは当然です。なんとなく好きだなと思うものもあれば、何となく嫌いだなと感じる作品もあるでしょう。
好きだな、嫌いだな、と感じられるだけでも十分アートを楽しんでいますが、一歩踏み込んで「なぜ嫌いなのか?」「なぜこの作品が嫌いなのか?」といったことを考えることで、新たな自分や意見を発見できることもあるでしょう。
あなたの中に生まれたその「なんとなく」の感情を大切にするようにしてみてください。
「なんとなく」を深掘りしていくことで、世界の解像度がグッと上がり、新たな自分と景色に出会えるでしょう。
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便器に名前を書いて2億円?「マルセル・デュシャン」
現代アートについて知りたいならば、まず押さえておくべきなのがマルセル・デュシャンです。
1917年、男性用小便器に「R.Mutt」というサインが入った作品が制作されました。
この作品のレプリカはのちに約2億円で落札されます。
諸説ありますが、実はこれが現代アートの始まりとも言われています。
これは「泉」という作品で、世界で一番有名な現代アートとも言われているのです。
「便器にサインをしただけでなぜアートなんだろう?」
「なにがそんなに素晴らしいのだろう?」
と思われた方もいるのではないのでしょうか。
実は、それこそがデュシャンの狙いであり、この作品の価値の真髄なのです。
私たちは便器の日常的な使用方法を知っていますが、そこから切り離し、新たな主題のもとで展示されることで、私たちは思考します。
彼は第一次世界大戦までの芸術家たちを、目から得る刺激のみを楽しむ「網羅的絵画」として強く批判しました。
その代わりとして、目ではなく脳に刺激や快楽を与えるアートを模索します。
哲学で楽しむ「観念としての芸術」を追い求めました。
そうして生まれたのが、「泉」です。
そして、後々現代アートへと引き継がれていくのです。
デュシャンの作品は、アートを受動的なものから能動的なものへと変化させました。
彼の作品は、現代アートの概念を覆したのです。
デュシャンの作品点数は多くはありませんが、それぞれの作品が現代アートへ与えた影響は計り知れません。
水玉によって世界と自分の境目を無くす?「草間彌生」
海の側に立つ大きな水玉模様のかぼちゃ。
見たことがある方も多いのではないでしょうか。
これを制作したのは、日本を代表するアーティスト「草間彌生」さんです。
この作品を見たときにみなさんは何を感じましたか?
初めて見る方にとっては「何がすごいのかよくわからない」と思われるかもしれません。
しかし、このオブジェが作られた経緯や草間彌生さんの人生を知ると、このかぼちゃに対する印象が変わるかもしれません。
それでは、草間彌生さんの人生について簡単にご紹介します。
草間彌生さんは1929年、長野県の裕福な家庭に生まれ落ちました。
幼い頃からスケッチに親しんでおり、4人兄妹の末っ子として、幸せに暮らしているように見えた草間彌生。
実は、彼女は統合失調症という病気に苦しめられていました。
病気により、視界が水玉で埋め尽くされたり、花が話しかけてくるような幻聴と幻覚に悩まされます。
また、周囲の大人からの理解も得られず、親からの虐待も受けていました。
そのような状況の中で草間彌生を救ったのはアートでした。
「子どもの頃から、自殺への憧れがすごくありました。家庭環境に悩んで、幻聴や幻視にとらわれてものすごく恐ろしくて、毎日、自殺したいと願うほど追いつめられて。自殺を思いとどまらせてくれたのは、絵を描いたり、作品をつくったりすることだった。それは私の生涯を通して、ずっと同じです。芸術への愛を見出して、私は今日まで生きてこられたんです」
引用元:VOGUE
という言葉を残しています。
草間彌生は幻覚に現れる水玉模様を描くことによって、無限に増殖した水玉の中に自分を埋没させ、世界と自分の境目を無くす試みを行いました。
その結果、誕生したのが草間彌生の代表的なモチーフである、あの水玉模様なのです。
自分が恐れるものを敢えて増殖させ、自分自身と一体化させることで苦しみから逃れる、という考え方は独特な面白さがあるかと思います。
今まで私たちは自分自身が恐れるものに対してどのように立ち向かってきたのかについて考えさせられます。
ちなみに、草間彌生がかぼちゃをモチーフとして頻繁に使う理由は、どれをとっても私たちと同じように同じ形のないこと、愛嬌があり気取っておらず、どっしりとしたフォルムであること、だと語っています。
草間彌生の人間へのイメージが表れていて面白いですね。
自身の体をアートにする「マリーナ・アブラモヴィッチ」
背中合わせに椅子に座り、互いの髪を結びつける男女。
この作品を見て何を感じますか?
これは、ユーゴスラビア出身のアーティスト、マリーナ・アブラモヴィッチの作品です。
彼女はパフォーマンス・アートのグランドマザーとも呼ばれています。
パフォーマンス・アートとはアーティストや団体、それ自体を表現の媒体として表現するアートです。
パフォーマンスを行なっているアーティスト、時間、空間全てが作品を構成しています。
先程の作品の背中合わせに椅子に座っている男女は、マリーナ・アブラモヴィッチと、西ドイツのパフォーマンスアーティスト、ウライです。
これは「自我」または「恋人」をテーマとし、精神的エネルギーや非言語コミュニケーションについて探究しています。
自分自身を展示しながらも、テーマについて探究するというのは面白さを感じられるかもしれません。
マリーナ・アブラモヴィッチは自らの体を使い、テーマについて観客に問いかけるとともに、自分自身でも探究を行なっているのです。
彼女は、体を張って私たちに問いかけてくれますが、2010年3月、ニューヨークのMoMA(近代美術館)で行われたパフォーマンスでは、なんと736時間も観客と時間を共有しました。
作品の名は「The Artist Is Present」(以下画像)
訳すると、作家は在廊中という意味になります。
この作品は展示室の中でマリーナ・アブラモヴィッチが椅子に座り、彼女の向かいに置かれた椅子に、観客が自由に座れるというパフォーマンスです。
彼女は展示期間中、736時間30分を沈黙し、次々に訪れる観客と時間を過ごしました。
月に換算すると、約1ヶ月もの間沈黙していたことになります。
長い時間のなかで彼女は一体何を感じていたのでしょうか。
アブラモヴィッチは、このパフォーマンスが彼女の人生を「完全に(ありとあらゆる要素、あらゆる身体的感情を)変えた」と語っています。
ほとんどの観客は椅子に座る時間は約5分でしたが、中には一日中座っている観客もいたようです。
このパフォーマンスはレディー・ガガからも注目を受けたため、ガガのファンである12歳〜18歳という若さの年齢層の人々も訪れました。
パフォーマンス中、アブラモヴィッチは沈黙していましたが、泣く場面がいくつかありました。
一つ目は椅子に座った観客が涙を流した時です。彼女はそれに応えるかのように、涙を流しました。
二つ目は、かつての恋人であるウライがサプライズで訪れた時です。
2人はもう何年も会っておらず、数年ぶりの再会でした。
驚いたアブラモヴィッチは思わずパフォーマンスのルールを破り、ウライの手を取り、涙を流します。
この感動的な瞬間は、YouTubeで何百万人もの人が視聴しました。
アブラモヴィッチとウライは以前から共同の作品を多数手掛けており、お互いが恋人の域を超えた特別な関係性であり、その姿は人々を惹きつけました。
そんな2人は実は誕生日が一緒です。
アブラモヴィッチが誕生日に思い立って出かけた旅行先で出会ったのがウライで、なんと誕生日まで一緒だったのです。
少し運命的なものを感じてしまいますよね。
やがて2人は、自分たちのことを「2つの頭を持った一身」と表現しました。
そんな2人の「恋人たち」という作品をご紹介します。
1988年、アブラモヴィッチとウライは2人の関係の終止符を打つために、旅を出ることにしました。
ウレイはゴビ砂漠から、アブラモヴィッチは黄海から、それぞれ万里の長城を2500km歩いた後に出会います。
そしてさよならを告げ、もう一度別れたのです。
沖縄県庁から北海道県庁の距離が2200kmほどなので、2人の歩いた距離は果てしないものだということがわかります。
そんな果てしない距離を歩いた先にみえたものはなんだったのでしょうか。
アブラモヴィッチはこの作品に関して、こう述べています。
「私達はお互いに向かって歩き、このとてつもなく長い距離を歩いた後、特定の形での終わりを必要としていた。それはとても人間的なことだ」
「ある意味では、それはドラマチックで、映画のエンディングのようなものだ。 最終的に何をするとしても本当にあなたは一人なのだから」
人の一生と人間同士の関係性の本質を表しているかのような作品です。
体重と同じ重さのキャンディーを敷き詰める「フェリックス・ゴンザレス・トレス」
次に紹介するのはフェリックス・ゴンザレス・トレスさんの作品です。
彼はリレーショナル・アートのパイオニアとして知られています。
リレーショナルアートとは現代アートの一種で、作品の内容や形式よりも「関係(relation)」を重んじる芸術作品のことです。
「関係」というのは作品と鑑賞者の関係、作品の制作過程で生じる周囲との関係などを指します。
床に敷き詰められた大量のキャンディ。
このキャンディは観客が自由に持ち帰ることができます。そして、次の日には新たなキャンディが元の重さまで補充されるのです。
この大量のキャンディたちは一体何を表しているのでしょうか。
実は、このキャンディは彼自身の体重と亡くなられた恋人と同じ重さなのです。
観客たちがキャンディを持ち帰ることによって、作品自体が消えていき、死の過程を表現しています。
彼の作品は、亡くなった恋人の永遠の不在から逆説的に浮かび上がる生の気配と、自分自身の死の予感が伝わります。
彼は紙、お菓子、ジグゾーパズル、時計など多岐にわたる素材で制作されています。
日常にありふれる素材を使うことによって、情緒的に表現しているのです。
また、時計を2つ並べた「perfect Lovers」という作品があります。
なぜ時計なのか、なぜ2つ並べるのか不思議ですよね。
これは彼の恋人が感染症を患ったことが発覚したときに制作されました。
機械的に音を鳴らす時計は2人の心臓の音を表しています。
彼は、同性愛コミュニティへの抑圧や国民のアイデンティティ、自由などを問いかけるような作品を多く残しました。
私たちに様々な問いを投げかけてくれたトレスですが、彼自身も1996年、39歳の時に感染症によって亡くなりました。
LOUIS VUITTONともコラボしたアーティスト「村上隆」
2008年、サザビーズのオークションで村上隆のフィギュアが約16億円で落札されました。
サザビーズというのはネット上でオークションを実施した、世界初の美術品オークションカンパニーです。
制作したのは、世界的に最も有名な日本人現代アーティスト、村上隆さん。一度は名前を聞いたことのある方も多いかもしれません。
驚くほどの高値で取引されたフィギュアを制作した彼は一体何者なのでしょうか。
村上隆さんは、1962年東京都板橋区出身の世界的に活躍されている現代アーティストです。東京藝術大学出身で、博士号までとっています。
村上隆さんは、元々日本画家を目指していましたが、大学院の修了制作で主席がとれず、日本画家になることを諦めてしまいます。
主席でなくても、日本画家になることは可能であるのに諦めてしまうというところに完璧主義を感じますね。
村上隆を語る上で外せないのは「スーパーフラット」という理論と、ビジネスのテクニックです。
一つずつご紹介いたします。
村上隆は日本のオタク文化に、江戸時代から脈々と受け継がれる浮世絵などの伝統的な日本の美術と通じるものを感じました。
その感性を元にしたのが「スーパーフラット」という理論です。スーパーフラットとは、「ハイ」と「ロウ」の境界線を曖昧にした表現のことです。
「ハイ」というのはハイカルチャーのことで、古典絵画やクラシック、文学といった上流階級が嗜む文化のことを指します。
「ロウ」というのは、「ロウカルチャー」のことで、ポピュラー音楽やテレビなどの、一般庶民が嗜む文化のことを指します。
浮世絵や琳派といった日本の伝統的な美術と、第二次世界大戦後の日本のポップカルチャー、オタク文化に類似性を見出し、それらを一つの平面に圧縮しました。
ここでいう、浮世絵や琳派はハイカルチャーで、日本のポップカルチャーやオタク文化がロウカルチャーということになります。
これらを一つの平面で圧縮することによって、それぞれの境界線を曖昧にしたのです。
それがスーパーフラットと呼ばれる表現です。
また、スーパーフラットは、戦後の日本社会で発展していった無階層的で一様な大衆文化も表しています。
実際に、「727」という作品を見てみましょう。
これは平面の背景にのっぺりと塗られたキャラクターが描かれています。
背景や雰囲気は伝統的な日本絵画のようですが、キャラクターは現代的ですよね。
その表現が生かされたのがLOUIS VUITTONとのコラボ作品です。
村上隆とLOUIS VUITTONとのコラボ作品は2003年から2008年の間に、なんと5回のコラボ作品を発表しています。
ハイブランドであるLOUIS VUITTONにあしらわれたのは村上隆のトレードマークでもある「お花」。
LOUIS VUITTONの上品さと、村上隆のポップで茶目っ気のある雰囲気が融合した作品になっています。
次は彼のビジネスマンとしての姿に注目してみたいと思います。
村上隆は元々、日本のアート市場に関して疑問を抱いていました。
日本のアート市場は小さいことはもちろんですが、欧米と比べると、あらゆる点で未熟でした。
そのため、彼は欧米のアート市場に自分のアート作品を持ち込みます。
海外で評価されたものを高く評価する傾向とある日本で、自分のアートを売るには、海外で評価されるのが良いだろうという戦略があったのです。
戦略通りに彼は欧米で自身のキャリアを確立し、評価されるようになると逆輸入のような形で日本にアートを持ち帰りました。
彼の活動の根底にある問題意識は、欧米と異なる日本発の言説を世界の美術界で確立していくことだったのです。
まとめ
現代アートは多様で難しく感じることも多いですが、その分、楽しむ方法は沢山あります。
少しでも何かを感じられたら、現代アートを楽しめているということです。
その「なんとなく」を大切にして、自分やアートと向き合う時間を作ってみてくださいね。
現代アートは次々と魅力的な作品が生まれてきています。
今日ご紹介したアーティストはほんの一部で、他にも魅力的なアーティストはたくさんいます。
少しでも興味を惹かれるアーティストが見つかったら、是非調べてみてください。
そして、気が向いたら美術館や展覧会に足を運んで、作品に参加してみてくださいね。
一歩踏み出せば、現代アートを通して新たな世界や自分に出会えるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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