ロマネ・コンティ その言葉の意味
『ロマネ・コンティ』という名称には3つの由来がある。
1つはフランスのブルゴーニュに位置する原産地呼称および品質規格の認定を受けた、最高峰のワイン醸造に適した地形・土壌・気候、すなわち「テロワール」を兼ね備えた銘醸地にある「ヴォーヌ・ロマネ」という最高峰の葡萄畑の村の名をワインにしたもの。
もう1つは17世紀からこの畑の土壌とワインの醸造作りに尽力してきた古代ローマ人に因んで敬意を払い命名されたものだ。
その後、美貌と教養を武器にルイ15世の妾の座に上り詰めたポンパドール夫人が権力誇示のためにこの畑の入手を企てる。その事態を黙って許さぬコンティ公爵が先手を打ち、ロマネの土地を即購入。そして、最終的に命名されたのが、現在に至り継承され続けている最高峰のワイン『ロマネ・コンティ』の名称の意味・由来なのだ。
ロマネ・コンティとは?
ロマネ・コンティとは仏語で「Romanée-conti」と記され、フランスのドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ(DRC)社により独占所有されているフランス東部のブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏、コート・ドール地区に位置するロマネ村において、約1.8ヘクタールに及ぶAOC(原産地呼称・品質規格認定)を受け、グランクリュ(特級)として格付けされているピノ・ノワール種を生産するぶどう畑の名称のこと。
また、その葡萄畑から醸造されたブルゴーニュワインの名称を意味している。
ロマネ・コンティの歴史
ロマネ・コンティの歴史は2000年の長期に及び、その畑の歴史は古代ローマ時代へと遡る。
古代ローマ人のワイン畑と醸造への尽力に敬意を称してその村は『ロマネ』と名付けられ、中世のロマネ村の葡萄畑はサンヴィヴァン修道院により所有されてきた。
その後、17世紀には太陽王と呼ばれたルイ14世の主治医のファゴンがスプーン1杯のロマネ・コンティを処方されたことから薬としても用いられた。
また、ルイ15世の愛人のポンポドール夫人によりロマネ村の購入計画が企てられたところに待ったをかけるかの如く名門ブルボン王朝のコンティ伯爵がロマネ村を買収し「ロマネ・コンティ」が誕生。
フランス革命時には国家に没収され、競売と遺産相続により細分化していったが「ロマネ・コンティ」の名は敬意と共に継承され「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ」(Domaine de la Romanée-conti 略称:DRC)社から現在も世に送り出され、沢山の人に愛されている。
ロマネコンティの値段
ワインの王様であるロマネ・コンティの価格は最低でも120万円だ。
価格はその年によっても変動するが、それでも100万円は下らない。それは何故か? ロマネ・コンティの畑は2000年前からローマ人によりワイン作りがなされていたプレミアムな土地だからだ。
更にDRC社はドメーヌとして1.8ヘクタールの葡萄畑で葡萄を栽培し、自社で醸造、熟成、瓶詰めまでを一括管理しているだけでなく、馬で田畑を耕作し、シュタイナーにより提唱されたビオディナミという有機農法に月の満ち欠けに合わせて育て、手詰みされたものを破砕・除梗せずに全房発酵し、長い時間をかけて緩やかな発酵を促された澱引きや濾過を最小限に留められている。
高級ワインロマネ・コンティに高価格が付くのも納得出来るだろう。
ロマネコンティはなぜ高額か?
神の舌を持つ男と言われる、世界で最も影響力のある評論家であるロバート・パーカーJr.氏のパーカーポイントで100点を獲得するなど、ワインの王様と呼ばれるロマネコンティ。
ロマネ・コンティは13世紀以降は王族や貴族達により愛され、現在も世界中の億万長者が欲している価値あるワインだ。
1945年は第二次世界大戦中に蔓延したフィロキセラにより、多くの葡萄の樹が被害に遭った中で翌年の1946年には全ての葡萄が伐採、植樹され、その後、ロマネ・コンティのヴィンテージが販売されたのは1952年のことである。
よって1945年のヴィンテージは新たな葡萄の木の植樹前の最後のワインでありながらも、第二次世界大戦終結の年として戦禍を免れ作られ、更にはその年は霜により収穫量が激減し600本となったことから1.8ヘクタールしかない小さな畑の中で過酷な状況を生き抜き、今日まで保管された実に希少性の高い別格のワインなのである。
ロマネコンティの最高額
戦時中に二硫化炭素の輸入が困難となり、葡萄畑はフィロキセラによる壊滅的な損害により伐採され、1946年に全面的に植え替えられた。
戦後初のヴィンテージは1952年なので1946~1951年はロマネ・コンティのヴィンテージは存在しないので1945年のヴィンテージに高値がついた。
2018年に開催されたサザビーズのオークションでは1945年ヴィンテージのロマネ・コンティ2本がそれぞれ当時の為替で6300万円と5600万円で落札され、ブルゴーニュワインの競売史上の最高額となった。
ヴォーヌ・ロマネ村の最高級の特級畑であるグランクリュの中心にある陽当たりの良いロマネの畑はブルゴーニュの最高峰に位置し、損害を経て過酷な競争を生き残った葡萄から年間6000本しか生産されない所がロマネ・コンティの希少価値を高め、ワインの王者として君臨し続けている所以である。
銀座の高級クラブとロマネ・コンティ
銀座の高級クラブでのロマネ・コンティの価格をご存知だろうか? 相場が1本200万円のロマネ・コンティが銀座では2500万円の金額で販売されている。2500万円とは高級外車が一台買える値段である。
銀座の高級クラブは常に一流の男性にとってのステイタスを誇示する憧れの場であった。ロマネコンティもまた、多くの人にとっての憧れのワインである。
かつてフランスのブルゴーニュに位置するロマネ村をブルボン家の貴族であるコンティ公爵が買収した後、ロマネ・コンティは宮殿内でしか味わえない特別なワインとして嗜まれた。
また、コンティ公爵は40名もの愛人を囲い、芸術文化のコレクターとして様々なアート作品を収集し、芸術の他に文学、哲学、科学に対しても深い造詣を持つ聡明な男性であり、コンティ公爵家ではモーツァルトによる演奏会も開催された。
知性教養のある貴族の男性が芸術と共にワインを嗜む贅沢な時間はロマネ・コンティの味を更に深いものとしてくれる。その付加価値を我々は今後も追求していきたいものだ。
ロマネコンティの相場と資産価値
ヴォーヌ・ロマネ村から生み出されるロマネ・コンティはわずか1.8haの葡萄畑でありながら、グランクリュ(特級)として格付けされているブドウ畑のラ・ロマネ、ラ・ターシュ、ラ・グランド・リュ、リシュブールに囲まれている。
また長きに渡り、サンヴィヴァン修道院により管理され、修道士により耕され、神へと捧げられたワインである。この小さな村の中で最も斜陽時間が長く、上質なワインを作る環境が全て整っている。
その地層のミネラル分に恵まれた中で生き残った葡萄だけが「ロマネコンティ」として生産・瓶詰めされることとなることが希少価値を生み出すことから相場は200万円とされている。5万円のワインならば40本、5000円のワインが400本購入出来る価格だ。
また、その空き瓶ですら、ネットオークションで3~5万円の高値がつけられていることもざらではない。
ロマネ・コンティの特級畑はわずか1.8haで生産量は年間6000本。更に世界の富裕層人口の割合は2210万人いるのだから争奪戦となることも頷ける。
ロバート・パーカー氏による分析データでもロマネ・コンティの価格高騰は明らかであり、特に2009年9月から2019の9月の10年間のロマネコンティの価格高騰は右肩上がりだ。今後もこの価格高騰は続くであろう。
ワインはインフレに強く、値崩れもしにくく、個人の趣味としても楽しめるため、近年、資産価値としても注目を浴びており、今後もワイン投資は増すばかりであると考えられる。
ロマネコンティの当たり年
ワインの当たり年とは?
ワインの当たり年とは完熟された葡萄が収穫された年のことを指し、Great Vintage(グレートヴィンテージ)と呼ばれる。
また逆に葡萄が十分に完熟できなかった年をOff Vintage(オフヴィンテージ)と呼ばれている。
完熟された葡萄にはタンニンと呼ばれる渋味成分が多く含まれ、このタンニンがワインの酸化防止と長期熟成を可能なものとしている。タンニンの渋みが長期熟成により甘い味へと変化していくのだ。
グレートヴィンテージである為には例年に比べて日照時間が長く、葡萄の育成が健全で酸味、甘味(糖分)、渋味(タンニン)が乗り、バランスの良い風味に仕上がっていることが条件となる。
ロマネコンティと1978年
2013年に香港のクリスティーズで開催されたオークションでは、ロマネ・コンティの1978年ものが1ケース367香港ドルと、為替換算で約4800万円の記録的高値で落札された。
1本あたりは約400万円であり、更にそのオークションに出品された高価なワインの6割がロマネ・コンティであったという。
1978年は1971年のロマネ・コンティのヴィンテージが5万円で販売されていた時代なので、どれだけ希少価値のある当たり年であったかが分かるものだ。
また、1978年という年は、成田国際空港開港、宇宙戦艦ヤマトブーム、クラブの先駆けとなるディスコブーム、王貞治、通算800本塁打達成、農林水産省が発足した年であり、世界初の人工授精も成功、ベビーブームであったことからこの年のワインを求める人口が多いことも容易に推測される。
パーカーポイントが95点であり、1978年から44年が経過した現在、400~600万円の高値で取引されている。
ロマネコンティとその味わい
1本あたり100万円を軽く超える伝説のワインであるロマネ・コンティはピノ・ノワールの味わいを全て凝縮したような風格を持っている。
フランボワーズ、ストロベリー、プラム、ダークチェリーのようなフルーティーな甘味や酸に加え、スミレやアイリス、薔薇の花のフローラル感、そして樽由来のシナモンやバニラ香、更にはタンニン由来のなめし皮や紅茶のような渋みと枯葉や土のような森を思わせる熟成香を感じられる非常にバランスの良い大地のテロワールを感じさせられる複雑みのあるワインである。
しかし、口当たりは軽快で磨き上げられた淡麗な風味なのが特徴だ。そして時間の経過と共にトリュフやジビエのような旨味やシナモンのようなスパイシーな風味を感じる。
ロマネ・コンティは風味のバランスを『完璧な球体』として捉えられることが多いが、まさに完璧な球体と言えよう。『味わう者の魂をも吸い取る』とも言わしめるその官能的で妖艶な風味に読者の皆様も触れてみてはいかであろうか?
まとめ
ロマネ・コンティの意味とは、古代ローマ時代から現代にも継承され続けているフランスの小さいロマネ村にあるワイン畑の名称であり、ワインの銘柄となるロマネ・コンティの名称でもあるが、同時に莫大な金額へと高騰し、価格変動し続けることにより世の中の経済までをも動かせる大きな得体の知れない財産であり、かつ、2000年以上の歴史を繋いできた妖艶な風味で人々を魅了させる官能的な液体である。
時には人々の権力誇示のアイコンとして用いられ、時には男女の仲を取り持つ。
ロマネコンティの意味は一言で言い表すには複雑な宇宙と言っても過言ではない。その大地や先人達の受け継いできた魂は国境を超えて今後も世界中の人々をこれからも熱狂させて行くだろう。
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