ワインに賞味期限はあるのか。そんな疑問を持ったことはないでしょうか?
この記事では「ワインの賞味期限」「未開封時の保存と開封時の保存」「ワインを長持ちさせる保存方法」について解説しています。
ワインの保存や賞味期限に悩んだら、ぜひ最後までご覧ください。
ワインに賞味期限はあるのか
はじめに結論として、ワインには賞味期限がありません。
おおよその食品に賞味期限または消費期限が設定されているため、ワインに賞味期限がないことを不思議に感じる方も多いかもしれません。しかし、ワインには賞味期限が設けられていません。
そもそも賞味期限とは「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のことです。品質が長期間変らないものには表示が必須ではありません。
袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のこと。スナック菓子、カップめん、チーズ、かんづめ、ペットボトル飲料など、消費期限に比べ、いたみにくい食品に表示されています(作ってから3ヶ月以上もつものは「年月」で表示することもあります)。
引用元:消費期限と賞味期限:農林水産省
賞味期限は、ワインのほかにも、アイスクリームや梅干し、はちみつや砂糖などの食材にも賞味期限は設けられていません。
「ワインはお酒だから」と思う方もいるかもしれませんが、ワインと同じ醸造酒(発酵したものをそのまま飲むお酒)であるビールには「製造から9か月後まで」という賞味期限が設けられています。
ではなぜワインには賞味期限がないのでしょうか?
ワインに賞味期限がないと考えられる理由
ワインに賞味期限がないと考えられる理由は全国の保健所によって「賞味期限を省略することが出来る食品」に定められているからです。
賞味期限の表示を省略できる食品には、次のものがあります。
賞味期限の表示を省略できる食品には、次のものがあります。
1.でん粉
2.チューインガム
3.冷菓
4.砂糖
5.アイスクリーム類
6.食塩及びうま味調味料
7.酒類
8.飲料水及び清涼飲料水(ガラス瓶入りのもの(紙栓をつけたものを除く。) 又はポリエチレン製容器入りのものに限る。)
9.氷これらについては、基本的に品質の変化が極めて少ないため、賞味期限表示を省略することが認められています。したがって、未開封の状態で、かつ、パッケージ等に書かれている保存方法を守った場合には、基本的に安全に食べることができます。
引用元:賞味期限が書かれていない食品があるのは、なぜですか?【食品安全FAQ】東京都福祉保健局
上記の9つのうち、ワインは酒類に該当しています。
しかし、同じ種類であるビールには賞味期限が記載されています。
では、ビールとの違いはどのようなものなのでしょうか。
2つの観点から見ていきたいと思います。
①ワインには「腐る」という概念がない
ワインには「腐る」という概念がないことが理由だと言われています。
ビールは腐るの?という疑問があると思います。ビールも腐るわけではないですが、賞味期限から2年以上経つと風味の無い液体に変わってしまうと言われています。
賞味期限の定義は「容器や袋を開封しないままで、表示された保存方法を守って保存した場合に、品質が変わらずにおいしく食べられる期限」と農林水産省が発表しています。
ワイン以外の賞味期限が省略できる食品も同様に長期間「腐る」ことのない食品が並んでいます。
未開封で適切に保存されていれば、100年後のワインも飲むことが出来ます。
また、実際にレストランなどにおいても、100年以上経ったワインを飲む機会もありますがワインは腐ることなく保存されています。
ただしワインも「腐る」ことはなくとも「劣化」する場合はありますので注意が必要です。
②ワインによって「飲み頃がさまざまである」
ビールはフレッシュであり、早めに飲んだほうが美味しいと言われています。
製造から消費までをなるべく短くする努力を生産者の方々がしています。
ところが同じ醸造酒であるワインにおいては少し意識が異なります。
ワインにおける理想的な熟成期間は対象のワインのスタイルや作り方によってさまざまです。
2年から3年で消費されるような想定をしているワインや10年後や20年後に飲み頃を迎えるような想いを込めて作られたワインなど、ひとくちに「ワインの飲み頃はいつ」とはまとめることが出来ないのです。
熟成によりワインは美味しく変化したり、まずくなってしまう場合もあります。
この熟成での変化は飲んでみるまで誰も知ることが出来ません。
代表的な例をあげると、ボルドーやブルゴーニュの長期熟成を視野に入れて作られた高品質なワインは20年後に美味しさのピークを迎えたり、甘口ワインや貴腐ワインは100年後にでも美味しく飲むことが出来たりします。
しかし、上記のようなワインも必ずしも美味しくなるわけではありません。
ヴィンテージによるぶどうの出来やコルクの状態など、様々な要因がうまく重なった時には良い変化が生まれます。
こういった「良い変化」が起きる場合に、賞味期限が設けられているとレストランなどの飲食施設ワインを楽しむことが出来なくなってしまいます。
味わいの変化について考えてみましょう。
賞味期限はないが味わいは常に変化する
ワインに賞味期限はありませんが、未開封の状態で適切に保存した場合でも味わいは変化していきます。
ワインは賞味期限がない代わりに適切な保存方法と飲み頃の把握が大切です。この「変化」とは良い変化だけではなく、悪い変化も起きるということを知っておきましょう。
良い変化の例
熟成によりもたらされる香りがいくつかあります。
白ワインや赤ワインで違いはあるものの、緩やかな酸化による「アーモンド」や「キャラメル」などの香りや果実味が発展することで生まれる「ドライフルーツ」のような香りなどがあります。
またタンニン(渋味)が穏やかになり、より繊細な舌触りや優しい印象のワインになります。
適切に保管をすることで熟成による良い変化が生まれ、ワインがより複雑なアロマや舌触りになることでさらに素晴らしいワインへと変化します。
ワインに賞味期限が設けられていないため、このような変化を楽しむことが出来ます。
悪い変化の例
熟成中に失ってしまう香りや味わいがあります。いわゆる「劣化」と呼ばれる変化です。
悪い変化においては主に「酸化」や「振動」「紫外線」などが関係しています。
過度な酸化による不快な香り(シェリーのような香り)が現れたり、果実味が乏しくなったり、悪い変化を与える場合があります。
また、褐色に色付いてしまい、ワインの持つ華やかさが失われてしまうケースも多いです。
不快な香りが増えてしまったワインや華やかさを失ったワインは瓶詰時よりも美味しくなくなってしまいます。
ワインには賞味期限がないとは言え、早飲みが向いているワインもあるので注意が必要です。
未開封と開封時の保存の違い
賞味期限のないワインでも、未開封時と開封時での保存の方法は大きく異なります。
どちらの場合も正しい保存方法を覚えておかなければ、ワインの品質を大幅に下げてしまうので注意が必要です。
保存可能な期間もかなり差がありますので、未開封時と開封時に分けてそれぞれ確認していきましょう。
未開封時の保管について
未開封のワインは適切な方法で保存した場合、かなり長く保存することが可能です。
しかし、上記でもお伝えした通り「20年以上保存できるワイン」というのは限られています。
ひとつの判断基準として「コルクの長いワイン」は長期熟成に向いているワインが多いと言われています。酸化のリスクを減らし、緩やかに長期熟成させてから飲んでもらいたいという生産者の意思が現れているからです。
ただし、スクリューキャップやガラス栓のワインでも長期の熟成は可能です。
未開封のワインを長期保管する場合は「温度」「湿度」「振動」「光」に気を付けて保管をします。
温度 | 14℃前後 |
湿度 | 75%前後 |
振動 | 無し |
光 | 暗所 |
これらがワインの熟成に向く環境です。この方法で保管された場合は長い期間、品質を保ちます。
温度は10度から14度前後というある程度低い温度が理想だと言われています。あまり低すぎても良くないので注意が必要です。
理想の保管環境を満たすところはなかなか存在せず、ほぼワインセラーだけになってきます。
保管環境に不安のある方は「ワインに賞味期限がないから」とはいえ、早めにお飲みなることをおすすめします。
開封時の保管について
開封時(コルクやスクリューキャップを一度でも開けた状態)の保存はさらに注意が必要です。
ワインの品質にいちばん影響を与える「酸化」が著しく進むからです。
開封後のワインはその他の食品同様に「開封後はなるべく早くお召し上がりください」が当てはまります。
開封後のワインを保存する場合は「温度」「酸素」に注意が必要です。
温度 | 可能な限り低温(凍らない程度) |
酸素 | 可能な限り接触させない |
これらが開封後のワインの保管に適しています。専用の保存器具(バキュバン)などを用いて冷蔵庫で保管し、数日以内に飲み終えてしまうのが理想です。
未開封のワインを長持ちさせる方法
賞味期限のない未開封のワインを長持ちさせるには適切な保管が大切です。ワインを長持ちさせるには「未開封時の保管」で紹介したように
温度 | 14℃前後 |
湿度 | 75%前後 |
振動 | 無し |
光 | 暗所 |
上記の4つに注意する必要があります。
これらの条件をしっかりと満たすことで、飛躍的に未開封のワインを長持ちさせることが出来ます。
しかし、上記のような環境を満たしている場所は身近にあるのでしょうか?
ご自宅で保管する際に、長持ちする保管場所として活躍する場所を紹介したいと思います。
①ワインセラー
ワインを長期保管するために作られているワインセラーが最も優れた保存場所です。
「温度」「湿度」「振動」「光」をすべて理想の状態にコントロールすることが可能です。
ワインセラーで保管された長期保管に向くワインは、予算や置き場所がネックですが、小型のタイプや安価なタイプなど使いやすいものも多くあります。
②自宅内の冷暗所
押入れや床下収納など普段使うことが少なく、日光が当たらない場所も保管場所としておすすめです。
自宅内の冷暗所では「振動」「光」を理想的な状態にすることが可能ですが、夏は「温度」が上がりやすく、冬は「湿度」が下がりやすいので注意が必要です。
長い期間ワインを保存する場合はあまり適しません。
③冷蔵庫の野菜室
冷蔵庫に備えつけられている野菜室は適度な「温度」と「湿度」を保つことが出来ます。冷蔵庫よりも開け閉めの回数が少ないので、開け閉めによる「振動」や庫内灯による「光」の影響は少なく抑えることが出来ます。
しかし、野菜室も冷蔵庫本体の細かい振動などがあるので数年単位での保管はおすすめできません。
開封したワインを長持ちさせる方法
開封したワインを長持ちさせる方法もいくつか紹介します。
可能な限り酸素との接触を遮断することで、開封したワインを長持ちさせることが出来ます。
しかし、開封したワインは品質の変化が未開封のワインに比べて圧倒的に早く進むので注意が必要です。
じつは開封してから数時間程度すると酸素との接触で良い変化が起き始めて美味しくなるワインもたくさんあります。
タンニンが強いワインなどは酸素に触れると飲みやすくなります。
とはいえ、開栓したワインはなるべく早めに飲むことをおすすめします。
飲み残ったワインは下記のような方法で保存をしておくと、風味を長持ちさせることが出来ます。
①瓶内の空気(酸素)を抜く
開封後のワインの瓶内から空気を抜いておくと、やや長持ちします。
専用の器具(バキュバン)などを使用すれば、手軽に空気を抜くことが出来ます。完全に空気(酸素)の無い状態にすることは難しいですが、ただ栓をしている状態よりは酸化を緩やかにしてくれます。
また、栓や器具は何回も使用できるのでランニングコストがかからないのも魅力的です。
②不活性ガスを充填する
瓶内に不活性ガスを充填させて、空気(酸素)と入れ替える方法です。
専用の器具を使って、瓶内の空気を活性のないガスに代えることで酸化を防いでくれます。
この方法も100%置換されるわけではないのですが、1週間程度ワインの品質を保ってくれる印象があります。(ワインのスタイルによって差があります)
ただ栓をしただけよりも長持ちする保管方法なので、開栓後のワインを長持ちさせたい場合はおすすめの方法です。
ただし、ガスを毎回充填するので不活性ガス代がランニングコストとしてかかります。
賞味期限に不安があればお早めに
ワインには賞味期限がありません。とはいえ、必ずしも品質を保っているわけではありません。
ワインの飲み頃はさまざまであり、プロフェッショナルであるソムリエから見ても判断が難しく至難の業です。
賞味期限がないからといって、すべてのワインが長く保管できるわけでもありません。
適切な保存方法をしていても飲み頃を過ぎてしまうワインも多く見受けられます。
賞味期限や保管方法に不安を感じたらソムリエに相談をするか、早めに飲むことをおすすめします。
しかし、賞味期限に捕らわれることなく「熟成」を楽しむことが出来ることもワインの魅力のひとつ。
適切な保管方法を守り、ワインと一緒にゆっくり年を重ね、素晴らしい熟成を経たワインを飲んでみるのも魅力的な経験です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はワインの賞味期限や未開封時と開封時の保存方法の違い、ワインを長持ちさせる保存方法について解説をしてきました。
ワインには賞味期限がなく、未開封であれば適切な保存方法で保管をすると非常に長持ちします。
ただし、飲み頃の判断はワインそれぞれなので気を付けましょう。
長い年月を過ごしてきたワインは、熟成によって新たな味わいを得ますので、しっかりと保存方法を理解し、素晴らしいワインを楽しみましょう。
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