ホーム コラム ワインの読み物 ワインの基礎知識 ワインの格付けって何?ワインの等級と価格の関係について解説

ワインと言えば「5大シャトー」や「グラン・クリュ」など、格付けされたワインについて目にする機会が多いのではないでしょうか?このような格付けワインはテレビ番組などでもよく使われますが、ワインの格付けがどのようなものかご存じの方はそう多くないように思います。

この記事では

  • ワインの格付けとは何か
  • ワインの等級と価格の関係はどのようなものか

について解説しています。

ワインの格付けが理解できると今まで以上にワインが楽しめるようになるので、ぜひ最後までご覧ください。

ワインの格付けとは

格付けとは何か

最も有名な格付けはフランスのボルドーで1855年に格付けされた「1855年メドック格付け」であると感じる方が多いと思います。

ボルドーにある10,000を超えるシャトー(醸造所)を、いわゆる「1級」から「5級」までの等級に格付けしたものです。その数はたったの61シャトーです。さらに、私たちがよく聞く「五大シャトー」と呼ばれるワインたちは1級に属するシャトー(5つのみ)を指しています。

このようにワインの格付けとは「ワインを等級や重要産地に分けたもの」を指します。

「1855年メドック格付け」以外にも、いくつかの等級に分かれている格付けが存在します。代表的なものがAppellation d’Origine Contrôlée(アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ)またはAOCと呼ばれるエリアごとの格付けです。

格付けはなぜ出来たか

格付けが出来た理由は「1855年メドック格付け」においては「上質なワインの序列をわかりやすくするため」です。AOCにおいては「良質なワインを作る原産地を保護するため」に作られました。

つまり、どちらも等級を用いて価値をわかりやすくしています。
(AOCにおいては偽物を防ぐや原産地の価値を守るためという意味合いが強い)

1855年メドック格付けもAOCも「ピラミッド型の等級構造」になっています。

メドック格付けの場合は1級から5級の評価、AOCの場合は産地の面積(小さくなる)になっています。メドック格付けでは、頂点の1級は61シャトーのうちの5シャトーであり、AOCの頂点付近は「フランス>ブルゴーニュ>シャンベルタン」とどんどん少なくなっていきます。

・格付けの種類 どんな格付けがあるのか

  • ボルドー⇨メドックの格付け、サンテミリオンの格付け
  • ブルゴーニュ(フランス全域)⇨AOC(グラン・クリュやプルミエ・クリュ)
  • ドイツ⇨QbA(ぶどうの糖度での格付け及び等級)
    など…

世界には様々なタイプのワインの格付けや等級があります。国の文化や背景で、どのように格付けされるかや等級のわかりやすさなどは異なります。

全ての格付けを紹介することは難しいので、代表的な格付けや等級を解説していきます。

ヨーロッパの格付けと等級

ヨーロッパ各国の代表的な格付けを紹介します。

フランス(AOC)

AOCとはAppellation d’Origine Contrôlée(アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ)の略称で、日本語に訳すと「原産地統制呼称制度」と呼ばれています。

もともとは格付けというよりも「土地にお墨付きを与える」制度ですが、ブルゴーニュなどではワインの等級や格付けに密接に関係しています。非常に高品質のぶどうが穫れるエリアは「グラン・クリュ」などと呼称され、品質や伝統などがいまでも守られています。

イメージとしては名産である「千葉県産ピーナッツ」は千葉県でしか生産されないということです。さらに千葉県の「八街ピーナッツ」と呼ぶことが出来るのは千葉県八街市とその周辺地域だけです。ほかにも北海道の「夕張メロン」などがありますが、九州で「千葉県産ピーナッツ」や「夕張メロン」が作られていたら、やはり違和感があります。

フランスのAOCも同じで、フランス⇨ブルゴーニュ⇨ヴォーヌ・ロマネ村の順に小さな区域になっていきます。等級や格付けは区画が狭くなるに伴い、より細分化され、ブランド化される場合がほとんどです。

ドイツ(QbA)

ドイツの格付けはやや複雑です。クヴァリテーツヴァイン・ベシュティムター・アンバウゲビーテ(Qualitatswein bestimter Anbaugebiete)という制度はQbA(クーベーアー)とも呼ばれ、フランス同様にドイツでも13の地区「指定栽培地域上質ワイン」という等級に定めています。モーゼルやラインガウなどの地名を聞いたことがある方も多いと思います。

さらに、ドイツには特徴的な格付けがあります。QbAに内包されている「ぶどうの糖度における等級」を等級としたプレディカーツヴァイン(Pradikatswein)という等級で、「肩書き付き上質ワイン」を意味します。QbAの13の生産地をより細分化した地域内で収穫したブドウを用い、さらに収穫時のブドウの糖度に応じて六つの肩書き(Pradikat)に分けられます。

  • トロッケンベーレンアウスレーゼ Trockenbeerenauslese
  • アイスワイン Eiswein
  • ベーレンアウスレーゼ Beerenauslese
  • アウスレーゼ Auslese
  • シュペトレーゼ Spatlese
  • カビネット Kabinett

と等級が分かれています。冷涼地の多いドイツでは、ぶどうの糖度を重視していたこともあり、糖度の高いぶどうを高い等級として認めています。トロッケンベーレンアウスレーゼは「貴腐菌」という特定のカビが繁殖した場合のみ収穫出来る「貴腐ぶどう」で作るため、最も糖度が高く、生産量もわずかで手間もかかります。そのため等級の高い貴重なワインとされています。

トロッケンベーレンアウスレーゼは世界三大貴腐ワインとしても有名です。

スペインやイタリア(DOやDOCG)

スペインやイタリア、ギリシャやポルトガルにもフランス同様に「原産地統制呼称制度」が存在します。各国にも「グラン・クリュ」に値するような制度があり、高品質なワイン作りとその保護を行っています。

「原産地統制呼称制度」の始まりはイタリアだと言われています。トスカーナ大公のコジモ3世が1716年にカルミニャーノ、キアンティ、ポミーノ、ヴァル・ダルノ・ディ・ソプラのワイン産地地の境界を定めたことが「原産地保護」の始まりとなりました。

もともとは「ワインのブランド化」「偽ワインの取り締まり」という経済戦略として施行されたのがきっかけです。

スペインでは2003年からビノ・デ・パゴ(Vino de pago/VP)という「最高の条件の畑」を認定しており、最高峰の畑=最高級品質を示す等級になっています。

ブルゴーニュの「グラン・クリュ」と似たような等級であり、より現代的に定められています。

フランスの代表的な格付けと等級

格付けや等級を知るために、少し掘り下げてみたいと思います。

そこで、前述の「メドック格付け」が有名なフランスを詳しく見ていきます。

メドック格付けとは

「1855年メドック格付け」は多くのワイン愛好家に覚えられている格付けです。

じつは「1855年メドック格付け」が作られた理由は「1855年のパリ万博」のためなのです。当時、すでに世界的ワイン産地であったフランスはワインで世界にアピールをしようと考えました。

しかし、フランスの数多くあるワインは世界の美食家から「どのワインが上質なワインなのかわからない」と苦言を呈されていたのです。

そこで、ナポレオン3世は名産地であったボルドーの商工会議所に「観光客用にわかりやすい指標を作れ」と命じました。

その命令を受け出来上がったのが「58シャトーを5つの等級に分けた」メドック格付けです。

なぜ58シャトーだけだったのか?

じつは、この「メドック格付け」はボルドーの商工会議所が急いで作成した(やる気があまりなかった)と言われており、あまり力を入れて作られなかったのです。

しかし、この格付けは当時(1855年以前)高値で取引されていたワイン、つまり人気や評価が高いワインが58シャトーに選出されたと言われています。この格付けは2022年の現在でも、多少の変化はありますが維持されています。いまでも「5大シャトー」は高品質であり、高値で取引がされています。

画像 ボルドー格付けまたはぶどう畑

ブルゴーニュ格付け

ブルゴーニュでは大きく4つに格付けされています。ボルドーとは違いAOCのような感覚で分けられている格付けです。一番上から、グランクリュ 、 プルミエクリュ 、 村名クラス 、 地域名クラスという等級に分かれています。

グランクリュは「特級畑」と呼ばれ、ブルゴーニュ全体生産量の1.4%ほどしかないため、とても貴重です。「ロマネ・コンティ」「シャンベルタン クロ・ド・ベーズ」などフランスを代表する畑がグランクリュとして認定されています。

この「畑」というのは、1人の生産者が所有しているものではないため、何名かの生産者によって分割で所有されているケースが多いです。(モノポールと呼ばれる1生産者のみが単独所有している畑もあります)

プルミエクリュもグランクリュと同じく「畑」に対して等級が設定されています。グランクリュに比べて生産量は多いですが、それでも全体の10%ほどです。

「1級畑」と呼ばれ、2番目のイメージがありますが、中にはグランクリュを凌駕するプルミエクリュのワインも存在するので「2番煎じ」というわけではありません。

村名クラスはその名の通り「村」に対して等級が設定されています。良質のぶどうが穫れる村を認定し、ラベルへ表記することが出来ます。

グランクリュなどに比べ、収穫出来るぶどうも多く、ワインも多く作れるため、お手頃な価格でワインが流通することが多いです。

地域名クラスというのは「ブルゴーニュ」など、村名よりもさらに大きな範囲で認定されている等級です。村名クラスよりもさまざまな場所のぶどうが使用できるので、4つの格付けのなかでは最も安価でワインを手に入れることが出来ます。

しかし、「ブルゴーニュ」自体も有名な産地ですので品質は安定しています。

画像 ブルゴーニュ格付け階層

格付け及び等級と価格の関係性

様々な格付けを見てきましたが、「格付けや等級と価格の関係」についても考えてみたいと思います。前述したボルドーとブルゴーニュの格付けや等級と価格の関係はこのようになっています。

ボルドーの場合

5級シャトー<4級シャトー<3級シャトー<2級シャトー<1級シャトー

と、基本的には価格が高くなっています。1級のシャトーは群を抜いて高価であり、現行で手に入るワインでも、10万前後で取引が行われているワインたちです。もちろん例外もあり、5級シャトーでもシャトー・ポンテカネのように2級や3級に匹敵する価格で取引されているワインも存在します。

これらは格付け以外にも人気や需要、メディアへの露出具合などで変動しますが、基本的には1級に近づけば近づくほど価格も高くなっていきます。

1級 ¥80,000-150,000 (おおよその価格幅)
2級 ¥15,000-40,000
3級 ¥10,000-30,000
4級 ¥10,000-20,000
5級 ¥5,000-20,000
※一部例外もあります。※バックヴィンテージを除く

ブルゴーニュの場合

ブルゴーニュのなかでも最も北に位置し、等級と価格の関係がわかりやすい「シャブリ」を基準に考えてみたいと思います。まずはシャブリの格付けや等級について紹介していきます。シャブリはAOCを元に4つの等級に分けられています。「シャブリ・グラン・クリュ」「シャブリ・プルミエ・クリュ」「シャブリ」「プティ・シャブリ」の4階層になっています。

①「シャブリ・グラン・クリュ」

  1. ブーグロ BOUGROS
  2. プリューズ PREUSES
  3. ヴォーデジール VAUDESIR
  4. グルヌイユ GRENOUILLES
  5. ヴァルミュール VALMUR
  6. レ・クロ LES CLOS
  7. ブランショ BLANCHOT

※今回はムートンヌは除外しております。

という7つの畑が「シャブリ・グラン・クリュ」として認められています。最も品質の高いぶどうからワインが作られます。シャブリ・グラン・クリュの生産量はシャブリ全体の生産量のわずか1%です。

②「シャブリ・プルミエ・クリュ」

フルショーム、モンテ・ド・トネル、モン・ド・ミリュー、ヴォロランといった歴史的に優れた畑が有名です。プルミエ・クリュに認定されているのは40のクリマに加え、細分化された79のリュー・ディです。主要なグループとして17つにまとまっており、そのうちの24の畑名を生産者たちはラベル上に表示しています。

この等級の生産量はシャブリ全体の14%を占めます。

③「シャブリ」

市場に最も流通しており、一般的に「シャブリ」と言えば、この等級のことを指します。

シャブリの個性を充分に発揮したワインであり、世界的にも人気を博しています。

生産量はシャブリ全体の66%と最も多く生産されています。

④「プティ・シャブリ」

シャブリのエントリーレンジであり、最もお手頃なスタイルです。生産量はシャブリ全体の19%にあたります。主に若いうちに消費されるワインがほとんどです。

このような格付けや等級をみると

シャブリ・グランクリュ⇨シャブリ・プルミエクリュ⇨プティ・シャブリ⇨シャブリ

の順に生産量が少なくなっています。とくに「シャブリ・グラン・クリュ」は全体の1%ほどしか生産されていないので、貴重であることがわかります。

価格の高い順に並べてみると

  1. シャブリ・グラン・クリュ(¥14,000)レ・クロ
  2. シャブリ・プルミエ・クリュ(¥6500)ヴァイヨン
  3. シャブリ(¥4200)
  4. プティ・シャブリ(¥2500)
    ※ドメーヌ・ブノワ・ドロワンのシャブリを参照(プティ・シャブリのみ別生産者)

となります。

シャブリとプティシャブリの位置は違いますが、生産量品質価格に影響を与えていることがわかります。

格付けや等級が高い≒価格が高い

シャブリの格付けを紹介したように、ブルゴーニュやスペインなど、どの生産地も基本的に「格付けが高い=少エリア=希少=価格が高い」という構図が成り立つ場合が多いです。
(※必ずというわけではありません)

格付けされたワインの中で、高い等級のワインは必然的に生産量が少なく品質が高く、さらに人気(需要も)もあるので価格も高価になるケースがほとんどです。

まとめ

今回の記事では

  • ワインの格付けとは?
  • ヨーロッパの代表的なワインの格付けと等級
  • 格付けや等級と価格の関係

について解説をしてきました。

いままで何気なく聞いていた「ボルドー1級」や「AOC」などは格付けであり、ワインの等級を表したものです。そして、ワインは古くから格付けや等級が大切にされてきました。

格付けが高いワインは貴重であり、高品質なワインが多いです。特別な日や特別な人と楽しむときは格付けワインを用意して、過ごしてみてはいかがでしょうか。

ワインの格付けを理解することは、ワイン通への第一歩を踏み出すことです。

これから、ワインを楽しむ際に少しでも「格付け」や「等級」のことを思い出していただければうれしいです。最後までご覧いただき、ありがとうございました。