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ワインの情報がたくさん!ラベルの読み方を覚えると普段のワイン選びが変わる

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ワインのラベルって何が書いてあるの?

ワインのボトルに貼ってあるラベルには、いろいろなタイプのものがありますよね。

文字だけが並んでいるシンプルなものもあれば、動物などのイラストが入った可愛いものや、風景画が描かれているもの、アーティスティックなデザインのものなど、非常にバラエティ豊かです。

瓶の形はある程度決まっていても、ラベルそのものの大きさや形は一定ではなく、よくある横長の長方形のものだけでなく、縦長のものや、上の部分が山の稜線を切り取ったようなデザインになっているもの、ラベルが1枚だけでなく2枚、3枚と複数枚いろいろ貼ってあるものがあったりします。

ラベルに書いてあることには意味があるのだろうということは、日本ワインのように日本語表記のものを見ればわかりますが、英語やフランス語では、外国語ということもあり、理解できないこともあります。

そうなると、それぞれのラベルに書いてあることの意味や、デザインが意図することがよくわからないのもあって、どれもそれほど変わらないかなと考えて、ついつい好みのデザインのものに手が伸びたりしませんか?

今日からはワインを選ぶとき、ちょっとその手を止めて、ラベルに何が書いてあるかを確認してからワインを選べるようにステップアップしてみましょう。

普段のワイン選びがちょっぴり楽しくなりますよ。

実は法律で決まっている、ワインのラベルに書く情報

ワインのラベルに書いてあるのは、そのワインの銘柄名だけでなく、「どこで、いつ、だれが」造ったのかが記されています。

その他にもアルコール度数や、ワインの内容量なども記載されていますが、その国によって必ず記載しなければいけない事柄が違っているので、情報を読み取ることに慣れていないうちは少し戸惑うこともあるかもしれません。

また、ワインのラベルのことをフランス語では「エチケット」と呼び、ワイン好きの人たちの間ではそれが一般的な呼び名になっていたりもします。

エチケットには荷札などの意味がありますが、まだフランスに王朝があった頃、宮廷に客人が招かれると、どのように振る舞えばいいのか、礼儀作法が書かれた札のようなものがあったといわれ、それがワインのラベルをエチケットと呼ぶ由来となっているという説があります。

そのワインのラベルに書かれていることは、ひとつひとつ書いてあることを読んでいけばわかります。

まず、フランスの赤ワインを例にして読み解いてみましょう。

これはフランスのボルドー地方のワインなのですが、パッと見たときに全体を捉えてしまうので、どこを見ればボルドーのワインなのか、今ひとつピンとこないかもしれません。

そこで、ラベルをブロックごとに分けて見てみましょう。

それぞれの文字列をバラバラにすると、書いてあることが理解しやすくなります。

まず日本語にそのまま書き換えて意味を説明していくとこんな感じになります。

①サン・テミリオン

フランスのボルドー地方にあるワイン産地の名前です。

ボルドーを流れるドルドーニュ川右岸にある地域で、メルローをメインにしたカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランなどをブレンドした、エレガントなワインが造られていることで知られています。

②アペラシオン・サン・テミリオン・コントローレ

この最初にある「アペラシオン」というのは、フランスの法律で決まっている「原産地呼称」のことを意味します。

これが書いてあることで、サン・テミリオン地区の原産地呼称を名乗ることの出来る品質のワインであることがわかります。

原産地呼称を名乗るためには、法律に従ってぶどうを育て、醸造することが条件になります。

栽培が許可されているぶどう品種から始まり、収穫量や最低アルコール度数、醸造方法など、かなり詳細な決まりがあることから、原産地呼称がついているワインはフランスがその品質を保証する証でもあります。

③グラン・ヴァン・ド・ボルドー

グラン・ヴァンとは、直訳すると「偉大なワイン」という意味です。

なので、「ボルドーの偉大なワイン」という意味になります。

グラン・ヴァンとは、ワイン好きの人たちが憧れるような、ボルドーの5大シャトーや、ブルゴーニュのグラン・クリュと呼ばれるワインを指すことが多いですが、この表記に関しては法律的にはっきりとしたガイドラインがないため、生産者が自由に記載することが出来ます。

④ミレジム2018

ミレジムはワインに使われているぶどうが収穫された年のことを表す言葉です。

この表記では、2018年に収穫したぶどうが使われているということになります。

⑤メゾン・カステル

メゾン・カステルはフランスワインの生産販売量がナンバーワンであるカステル社のワインのブランドです。

フランスのさまざまなエリアのワインをラインナップしており、品質にも安定感があるので、覚えておくといいかもしれません。

⑥フランス

生産国名です。必ずラベルのどこかに記載される決まりになっています。

このように、ワインの生産国や産地だけでなく、使っているぶどうを収穫した年やどんなワインなのかを推測する手がかりになるのが、ラベルに書いてある情報です。

国や地域によって記載に必要な事柄が違うため、慣れないうちは疑問が出ることもあるかもしれません。

そんなときはショップの担当者に確認したり、ワインの情報を調べてみることで詳細な情報がわかることもあるので、どんどん質問していくといいでしょう。

そうしてさまざまなワインを飲む中で、「この間飲んでおいしかったワインはこの産地のものだった」とか、「この品種のものが好みかも」ということがわかってきます。

ラベルを読み解くことは、自分の好みを知る最初の一歩でもあるのです。

忘れてはいけないバックラベルの存在

ワインのラベルをどのように読み解くかについてはここまでにして、表に貼ってあるラベルとは別に、瓶の裏側にラベルがまた別に貼られていたり、キャップシール(瓶口にかかった保護フィルムのこと)などにワインの情報が書かれていることがあります。

ワインのラベルに記載する情報は各国それぞれに法律で決められていますが、それとは別に日本の酒税法によって表記しないといけない事柄が決まっています。

輸入ワインの場合、表面のラベルにある記載では酒税法上必要な事柄が足りなかったりする事があり、そうした場合にキャップシールやバックラベルに不足事項を記載して貼っていることがあります。

写真は日本ワインのものですが、酒税法上の分類である「果実酒」や、酸化防止剤を使用しているかなどが、他の国にはない記載事項だと言えるでしょう。

輸入ワインでもバックラベルが貼ってあるものがあり、特にカリフォルニアやオーストラリアといったニューワールドと言われる産地のものに多い傾向があります。

輸入ワインのバックラベルにはどんな条件でぶどうを作っているかや、どんな設備やテクニックを用いてワインを醸造したかが記されていることが多く、写真にとって自動翻訳にかけたりすることで、そのワインのことをさらに詳しく知ることが出来ます。

ラベルはワインを手に取ってもらい、飲んでもらうまでの「消費者を惹きつけるための情報」が詰まっているともいえるので、これを読み解くことがおいしいワインを手に入れる鍵にもなります。

ニューワールドのワインはラベルの読み方が違う?

フランスワインのラベルを例にあげて、ラベルの読み方を説明しましたが、同じようにラベルが貼ってあっても、国によって記載されていることも違っていたりします。

フランスやイタリアなど、古くからワインの歴史がある国に対して、アメリカのカリフォルニアやオーストラリア、南アフリカやアルゼンチンなどの国のことを「ニューワールド」と呼びます。

このニューワールドのワインは、フランスなどに比べると記載されていることから情報が読み取りやすい、わかりやすい内容になっているのが特徴です。

上の写真はオーストラリアワインのラベルですが、確かに記載されている内容が少なくてすっきりとわかりやすいデザインになっているのが感じられます。

では実際に読み方を見ていきましょう。

ここでは内容がわかりやすいカリフォルニアワインを例に取ります。

ワイナリーの建物のイラストと、中央に配されたサインが印象的なデザインになっている、ロバート・モンダヴィ・ワイナリーのワインです。

記載内容は4つのみになっています。

①EST.1966

EST.はエスタブリッシュの略で、創業年のことを指します。創業したのが1966年という意味になります。

②ロバート・モンダヴィ・ワイナリー

ワイナリー名です。

このようにわかりやすくどこのワイナリーのものか、記されているものがほとんどです。

③カベルネ・ソーヴィニヨン

このワインに使われているぶどうの品種になります。

カリフォルニアのワイン法では、85%以上その品種のぶどうが使われていれば、ぶどう品種名をラベルに記載できるようになっています。

④ナパ・ヴァレー

カリフォルニアの銘醸地として知られている場所で、このワインがこの場所で取れたぶどうで造られたことを示します。

数多くのワイナリーがあり、品質の高いワインを造るワイナリーが多いことで知られています。

同じように法律に則ってラベルを作り、ボトルに貼っていても、フランスのものと比べると中身のワインの情報がシンプルに書いてあるだけなのがわかります。

フランスワインのラベルには、厳しい法律を守っていることや、質が高いワインであることを象徴するような文言が盛り込まれています。

また、産地名からぶどう品種を特定できる知識が必要になるため、初心者にとってはわかりにくく、手を出すのにはハードルが高くなってしまうのが実情です。

まずはニューワールドのワインを選べるようになることからはじめて、好みのものを見つけられるようになったら、フランスやイタリアの産地のことを少し勉強して、お店の人に手伝ってもらいながらワインを選ぶのもいいかもしれませんね。

単にスタイリッシュなだけでない、ラベルのデザインの意味

ワインのラベルも千差万別で、最初に挙げたフランスワインのように、シンプルに必要なことを記しただけのものもあれば、動物などのモチーフを取り入れた可愛らしいものや、アーティストが手掛けたものなど、さまざまなラベルがあります。

ワインのラベルのデザインには、もちろん意味があるものが多いのです。

フランスのワインは文字がシンプルに並んだものが多いですが、ブルゴーニュなら生産者の家の紋章が中央に入っていたり、ボルドーならワイナリーの建物と周辺の風景を描いたものなどがあります。

動物を描いたものも、なぜその動物を描いたか理由があったりします。

例えば、その地域で捕れるジビエを描いたラベルや、島で特産のシーフードを描いたもの、ワイナリーの当主が飼っているペットをモチーフにしたものなどもあります。

上の写真は「キュヴェ・ミティーク」という南フランスで造られているワインです。

今では信じられないような話ですが、1990年代のラングドックでは、安くて粗悪なワインを造る生産者が多く、質の良いワインを望むのは難しいことでした。

そんななか、ラングドックのワインの中で初めて、ロバート・パーカーが90点をつけたことで、キュヴェ・ミティークは一世を風靡したという経緯があります。

ワインの名前である「ミティーク」はフランス語で「神話」を意味します。

安ワインしか生むことのなかった地で、高品質なワインを造ることはまさに「神話」を作ることそのものでした。

キュヴェ・ミティークのラベルにはふくろうのイラストがあしらわれているのですが、ふくろうは、ローマ神話に出てくる女神であるミネルヴァの使いで、日本でもよく知られるように智慧の象徴でもあります。

キュヴェ・ミティークはもともと、ラングドックにある1600もの生産農家が持っているワイン造りの粋を集めて造られたワインでもあるので、ワインを象徴するアイコンとして、ふくろうはぴったりだといえます。

赤ワインのラベルに使われているテラコッタ色の紙も、南フランスの豊かな大地をイメージして選ばれたのだといいます。

このように、ラベルに描かれているモチーフやイラストには、そのワインを物語るれっきとした理由があることが多く、ワイナリーごとのさまざまなドラマを垣間見るきっかけにもなるのです。

今やワインもラベルで買う人も多く、「ジャケ買い専用」を謳ったオンラインショップもあるほどなので、もしもラベルが気に入って購入したワインがあったら、そのラベルに込められた意味を調べてみるのも楽しいかもしれませんよ。

ワインを飲んだ記録としてラベルを保存しよう

普段飲んでいるテーブルワインは別にするとしても、記念日に飲んだ特別なワインや、週末のちょっとしたごちそうを食べたときに飲んだワインのラベルをコレクションしたら、素敵な思い出の記録にもなります。

ワインラベルをコレクションしている人はワイン好きの方にもとても多く、専用のグッズなども販売されています。

ボトルに貼られたラベルを剥がすのには、ボトルを水につけておいたり、ラベル剥がし用のスプレーを使う方法などがありますが、ラベルを接着するときに使われている糊の強さによって、きれいに取れるかどうかが違ってくるのが難点です。

中には数日かけてお湯の中に漬けておいても、ラベルが浮いてこないなんていうこともあるほど。

素早くきれいにラベルを剥がして保存するなら、粘着シートを使った「ラベルコレクター」がおすすめです。

使い方は簡単で、ラベルの上から粘着フィルムを貼り付け、しっかりと粘着面にラベルが密着するように、コルク栓で表面をまんべんなく、少し力をかけてこすります。

こすり終えたら粘着シートをゆっくりと剥がせば、粘着シートにラベルの表面を剥がし取ることが出来ます。

これを台紙に貼って保存するのですが、台紙の裏面はメモになっていて、その日食べた食事のことや、おいしかったワインの味わいについてなど、思い思いにメモを綴ることが出来ます。

しかし、ラベルコレクターで集めたラベルを、バラバラの状態で保管しておくのでは、大切な思い出のあるラベルを失くしてしまいそうで心配ですよね。

そんな方のために、ラベル用のバインダーも売られています。

ラベルコレクターの粘着フィルムと台紙には2つ穴が空いていて、綴じるときにいちいち穴を開ける必要もないのでとても便利です。

ワインラベルを保管して、なにかの折にファイルを開いてメモを見ると、さまざまな思い出が蘇る素敵なアルバムになるので、ワイン好きの方以外にもおすすめのグッズです。

アルバム保存はもう古い?いつでもどこでもアプリに保存!

特別な日に飲んだワインのラベルを剥がして保存するのは、いい思い出づくりになりそうで素敵ですが、家でワインを飲むならともかく、外でしか飲む機会がほとんどない人にとってはなかなかハードルの高いものになります。

飲食店でもワインバーや格式の高いレストランなどでは、スタッフにいうとラベルコレクターなどできれいに剥がしたものを渡してくれるお店が多いといえます。

しかし、仲間との飲み会で出てきたワインがおいしかったけれど、あの銘柄は何だったか知りたい、ということも出てくるでしょう。

そんなときに便利なのがスマートフォンのアプリです。

ワインラベルを収集するためのアプリは、日本語のものに限らず、各国語で使えるものなど、さまざまなものがリリースされています。

ワインのラベルを写真に納めると、そこから文字情報を読み取り、ワインの名前や産地を読み込んでくれるものや、そのワインがどんな評価をされていて、どんな料理に合うかを教えてくれたり、自分の感想をレビューに記録することが出来るものもあります。

なかには、ワイン好き同士のコミュニティとして機能しているアプリもあり、アプリを通じてワインの好きな仲間と出会うことも出来るのです。

料理を写真に収めてSNSにアップしたりするのはいまや当たり前とも言えるので、それと同様にワインのラベルの写真を撮って、ワインの造詣を深めることにつなげるのもちょっとしたアイディアかもしれません。

まとめ

ワインというと、他のお酒と違って産地やぶどう品種、生産年などの情報が多く、香りや味わいを上手に表現できないといけない、敷居の高いお酒のように思ってしまっている人が多いのではないかと思います。

しかしそれは、ワインが水を加えたりせず、生のぶどうの果汁を使って造るからこそのものでもあるのです。

ワインは製品ではありますが、その前に農産物だという側面が非常に大きいお酒です。

どこの何という品種のじゃがいもがおいしいとか、こういう料理に使いやすいとかを語ることと、ワインがどこのどんなぶどうで出来ていて、こんな香りや味がするというのは、さほど変わりがありません。

ですから気負うことなく、勉強しようと肩肘張らずに、ネット検索などを上手に使って情報を取り入れ、好みのものを探して行くのが、ワインを楽しむ近道でもあります。

その1歩となるのがラベルの読み解き方だといえるでしょう。

外国語が苦手な人は、アプリを使って情報を探すのもいいでしょうし、そうして飲んだワインの記録が残るのは自分の成長記録のようでもあり、振り返ったときに楽しいものとなるはずです。

ぜひみなさんもワインのラベルにもっと触れてみてくださいね。